最上伝承野菜の紹介
最上伝承野菜とは
山形県の北東部に位置する最上地域。
最上地域には古くから栽培されている野菜が今もなお多く栽培されています。
その中でも以下の基準にあったものを「最上伝承野菜」と呼んでいます。
- 最上地域特有で概ね昭和20年以前から存在していた野菜・豆類など
- 現在も最上地域で栽培され、自家採種しているもの
令和元年11月現在で33品目が認定されています。
山形県の北東部に位置する最上地域。
最上地域には古くから栽培されている野菜が今もなお多く栽培されています。
その中でも以下の基準にあったものを「最上伝承野菜」と呼んでいます。
令和元年11月現在で33品目が認定されています。
主な栽培地 | 管内全域 |
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収穫時期 | 10月下旬 |
最上管内で広く栽培されている青豆で、主に正月用の煮豆として栽培されてきた。
冬場の野菜がない時期に食卓を彩る食材として重宝されている。
枝豆で食べてもおいしい。
主な栽培地 | 舟形町 真室川町 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
昔から広く栽培されてきた青豆の一種だが、青くて黒っぽいので、この名前が付いた。
煮豆や枝豆などでもおいしいが、風味がよく、乾燥しても青みが残ることから青きな粉にしてもおいしい。
主な栽培地 | 戸沢村 真室川町 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
豆が大きく、やや平たい形で、乾燥しても青みが残る。
お菓子がなかった時代には、炒ったものに砂糖をまぶして食べていた。
きな粉や、煮豆にして食べてもおいしい。
主な栽培地 | 管内全域 |
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収穫時期 | 10月下旬 |
1つの枝に5枚の葉がついていることから名前がついた。
「いつつば(ぱ)豆」とも呼ばれている。
昔は、水田の苗代や畔などで栽培され「なっしょ(苗代)豆」と呼ばれていた。
丸い形で香ばしく、正月の黒豆の煮豆のほか、若いうちに収穫して枝豆として食べてもおいしい。
主な栽培地 | 管内全域 |
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収穫時期 | 10月下旬 |
豆の真ん中に雁がかじったような模様が出ることから名前がついた。
黒五葉よりも一回り大きく、やや平たい。
煮ると柔らかくて甘みがある。黒豆煮のほか、若いうちに収穫して枝豆として食べてもおいしい。
主な栽培地 | 舟形町 |
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収穫時期 | 10月中旬 |
「くるみのようなこくのある味がする」ことから名前がついた。
莢が大きく、豆は扁平で白っぽく、真ん中に模様がでる。
豆腐や味噌にして食べるとおいしい。
主な栽培地 | 新庄市近辺 |
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収穫時期 | 10月中旬 |
「くるみのようなこくのある味がする」ことから名前がついた。
舟形のくるみ豆より黄色っぽく丸い。
枝豆、煮豆のほか、昔から味噌に加工して食べられている。
主な栽培地 | 新庄市野中 |
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収穫時期 | 10月下旬 |
元は鮭川村京塚で栽培されていた豆。
野中で栽培されるようになってから、豆が大きく、ふくよかだったこともあり「みんな金持ちになれたらいいな」との思いを込めて名前がつけられた。
現在では、「野中玄米味噌」として味噌に加工し販売されている。
主な栽培地 | 戸沢村蔵岡 |
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収穫時期 | 10月中旬 |
昔から蔵岡地区で栽培されている。
名前の由来は、最上川を遡上してくる「鮭(よう)の子」つまり「いくら」のような形をしているからという説と、「いくら」のようにたくさん実がなるからという2つの説がある。
味噌や豆腐にして食べるとおいしい。
主な栽培地 | 最上町本城 |
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収穫時期 | 10月下旬 |
以前は「大土(だいど)豆」と呼ばれ町内全域で栽培されていたが、現在は佐藤家のみで受け継がれている。現在で九代目。
「久五郎」という名前は、佐藤家の屋号。味噌にするととてもおいしく、佐藤家では、「九代目久五郎みそ」として味噌に加工し販売している。
主な栽培地 | 新庄市 真室川町 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
上部は赤紫色になり内部は白く肉質は柔らかい。
形は長くなるものと丸みをおびるものなど様々。
豆と同様、冬期間の保存食としてかぶは欠かせない食材。
甘酢漬けが一般的。そのほか、煮物やサラダでもおいしい。
種が実った後、乾燥した莢を棒で叩き、ゴミや殻を取り除き秋の種とする。
全て手作業で時間と手間をかけ、種が受け継がれていく。
主な栽培地 | 鮭川村石名坂 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
石名坂地区で昔から栽培されている。
全体的に細長いが、下部が下膨れするものなどもある。
漬物にすると食感がいい。
甘酢漬けのほか、鮭のざっぱ汁に入れて食べるとおいしい。
芽が出てから収穫まで、数回にわたり間引きしていく。
かぶを太らせるためには、間引きは必要不可欠。
主な栽培地 | 舟形町長尾 |
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収穫時期 | 10月下旬~11月上旬 |
長尾地区で昔から受け継がれてきた。
形は細長く、上部は赤紫色で下部が白っぽい。
食感は柔らかい。
甘酢漬けが一般的だが、春彼岸の時には、仏様が来る時と帰る時に吹雪に合わないよう願いを込めて「みそかぶ」にして食べられている。
甘酢漬けが一般的。冬の食卓にピンクの彩りを添える。
長尾地区では、彼岸の入りから彼岸明けまでの1週間、「みそかぶ」を食べる。仏様が来る時と帰る時に吹雪に遭わないようにという願いが込められているという。
主な栽培地 | 大蔵村滝ノ沢 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
近くの肘折温泉に出荷されていたことから名前が付いた。
形は細長い。上部は濃い赤紫色になり、下部も着色する。
この地域で栽培されたものは肉質は硬いので、長期保存が可能。
昔は塩だけで漬けて食べ、春先に酸っぱくなれば煮物にして食べていた。
現在は甘酢漬けなどで食べている。
四ヶ村の棚田に程近い、南山地区で作られている。
春、前年に種とり用に植え替えしていたかぶに黄色い花が咲く。その後受粉し、種ができていく。
家族が食べる漬物を漬けるのは、大切な冬の準備の1つ。
主な栽培地 | 金山町凝山 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
吉田家で100年以上前から代々受け継がれてきた。
最上かぶと同じ形態であるが、最上かぶより赤紫色が濃く、長さも20~30cmになる。
「吉田家で栽培しているから」という理由で名前が付いた。
サクサクとした食感でおいしい。
主な栽培地 | 真室川町川ノ内 |
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収穫時期 | 11月下旬 |
中川家で代々受け継がれてきた。
最上かぶと同じ色合いだが、形はずんぐりとしていて、その形が「とっくり」に似ていることから名前が付いた。
肉質は柔らかく、生で食べてもかぶ独特の辛みが少ない。
甘酢漬けや「よう(鮭)汁」などにして食べている。
雪が降るギリギリに収穫する。時には初雪後になってしまうことも。
冬期間も定期的に生で出荷したり、漬物に加工するため、降雪前に土に埋めて保存する。
厚切りの甘酢漬けは、サクサクとした歯触りを楽しめる。
主な栽培地 | 戸沢村角川 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
角川地区で昔から栽培されてきた。
様々な色や形のかぶがあるが、上部は赤か紫色で下部も色づくものが多い。
肉質はしまっていて、歯触りがいい。
甘酢漬けで食べるのが一般的だが、サラダやそばの薬味としてもおいしい。
一部の角川かぶは伝統的な焼畑で作られている。
8月上旬に斜面を焼き、お盆には種をまく。
葉もうっすら赤紫色に着色する。
甘酢漬けが一般的な食べ方。
主な栽培地 | 舟形町西又 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
西又地区で昔から受け継がれてきた。
形は大根のようで、全体が赤紫色をしている。
最上伝承野菜のかぶの中では、最も色づきが濃い。内部も赤く色づく。
肉質は硬い。生で食べると甘いが、漬けると辛みがでてくる。
甘酢漬けにすると、汁まで真っ赤に色づく。
ビートや着色料を入れなくても、真っ赤に着色する。
主な栽培地 | 管内全域 |
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収穫時期 | 9月下旬 |
里芋の仲間。えぐみが少なく、親芋、子芋、葉柄(茎)も食べることができる。
葉柄(茎)も食べられることから、「柄取り」=「からどり芋」という名前がついた。
芋はねっとりしていてきめ細かく、煮物にしてもおいしい。
茎は「ずいき」とも呼ばれ、甘酢漬けや、干したものは納豆汁の具として食べるとおいしい。
春、苗づくりから作業が始まる。
茎を干して「芋がら」にする。
茎は、甘酢漬けにする食べ方も一般的。
主な栽培地 | 新庄市本合海畑 |
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収穫時期 | 10月中旬 |
最上川の舟運文化の中で種芋がもたらされたと考えられている。
孫芋は細長い形のものが多い。
柔らかくぬめりが強く、芋煮、煮物で食べるとおいしい。
丁寧に土寄せされた畑。
その名のとおり、昔から畑作が盛んだった畑地区で、地区の宝とされていたのが、「畑なす」「畑いものこ」「畑うり」だった。
畑なすはH22に最上伝承野菜に認定され、畑うりは現在では栽培が途絶えている。
ぬめりが強く柔らかい芋は、芋煮にとても合う。
主な栽培地 | 真室川町小川内 |
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収穫時期 | 10月~霜降期前 |
室町時代から400年以上続く佐藤家の家宝の1つとして継承されてきた。
先祖の屋号から名前がついた。
種芋の冬越しの方法は、一子相伝で門外不出。
ぬめりが多く柔らかい食感。親芋も柔らかく食べられる。
芋煮で食べるとおいしい。その他、洋食やお菓子など幅広い分野で利用されている。
良質な粘土質の土が広がる大谷地には、清らかな湧水が流れ込む。
この土が、粘り気が強く柔らかい芋を育む。
皮ごと蒸した「きぬかつぎ」は、甚五右ヱ門芋の味と食感をダイレクトに味わうことができる。
主な栽培地 | 鮭川村米 |
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収穫時期 | 10月下旬~11月上旬 |
米地区で昔から受け継がれてきた。
種芋を守ってきた阿部家屋号から名前がついた。
孫芋は丸い形のものが多い。
柔らかく粘りがあり、芋煮、煮物で食べるとおいしい。
葉は大人の背丈ほどに伸びる。
主な栽培地 | 新庄市本合海畑 |
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収穫時期 | 7月中旬~9月下旬 |
最上川の舟運文化の中で種がもたらされたと考えられている。
大玉の丸なすで、実も皮も柔らかいが、調理しても煮崩れしにくい。
焼きなすや味噌漬けなどにして食べるとおいしい。
この1粒1粒が、翌年の畑なすを作る。
何よりも大切な種。
春、苗作りから作業は始まる。
ソフトボール大にまで成長する畑なす。
なすの食感と旨みを楽しむには、素揚げした畑なすをしょうが醤油で食べるのが1番おすすめ。
主な栽培地 | 真室川町 |
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収穫時期 | 7月中旬~9月下旬 |
明治の頃、鮭川村京塚から真室川町差首鍋に伝わったことが、真室川町での栽培の始まり。
もともと種を受け継いだ旧家の屋号から名前がついた。
黄緑色で形はずんぐりしている。水分が多く、生食に適している。
ピクルスや塩漬けにしても色がきれいなまま変わりにくい。
初夏、勘次郎胡瓜が実をつける。
収穫まであともう少し。
主な栽培地 | 真室川町鏡沢 |
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収穫時期 | 7月中旬~9月上旬 |
長さ15cmほどのずんぐりとした形で濃緑色に白い縦すじが入る。
皮は固めだが水分が多くみずみずしい食感で、早成りは頭部に苦味を有することが多い。
生食の他漬物に重宝され、大きい実は皮と種をとり味噌汁や炒め物にも美味しい。
約100年ほど前に種をもらい受けてきた先祖の名前を取り今朝治郎胡瓜とした。
初夏、今朝治郎胡瓜が実をつける。
勘次郎胡瓜に比べ、今朝治郎胡瓜のほうが長さは短く、緑色が濃い。
主な栽培地 | 最上町、真室川町、鮭川村、戸沢村 |
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収穫時期 | 6月下旬 |
赤紫色の外皮から名前がついた。
内部は白い。通常のにんにくより貯蔵性に優れ、芽が出にくい。
生では辛みが強いが、焼くとほくほくとした食感になり甘みがある。
生のすりおろしにんにくと味噌を合わせたものに、茹でたごぼうを和えた「にんにくごんぼ」は夏のスタミナ食。
太陽の光を浴び、にんにくは土の中でぐんぐん肥大していく。
最上赤にんにくを熟成させた黒にんにくは、甘味とコクがあり、まるでフルーツのよう。
主な栽培地 | 戸沢村蔵岡 |
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収穫時期 | 葉 7月下旬 種子 10月下旬 |
以前から食用や燃料用として栽培していたが、ナタネ油が主流になり栽培が途絶えた。
その後、韓国との交流の中で栽培が復活した。
葉はキムチ漬けやお茶など、実は油やすりエゴマなどにして食べられている。
葉が柔らかい時期に摘心し、茶葉とする。この時期の葉をキムチ漬けにする人も。
穂先が伸びてきて実がつき始める。
たくさんの加工品が販売されている。
主な栽培地 | 真室川町 |
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収穫時期 | 5月上旬 |
茎立菜の一種。春1番に雪を割るように成長することから名前がついた。
ほのかな甘みと柔らかな食感が特徴で、野菜の少ない春先に重宝される。
おひたしや炒め物、胡麻和えなどで食べるとおいしい。
収穫直後の茎を生で食べると、苦みが全くなく、ほのかに甘い。
収穫後、種採り用に残していたものから花が咲き、種ができていく。
主な栽培地 | 管内全域 |
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収穫時期 | 4月中旬~5月中旬 |
古くから最上地域に自生していたアサツキで、「ひろっこ」と呼んでいる。
雪を掘り起こして収穫したものは黄色くやわらかで、シャキシャキとした歯ごたえと独特の甘みがある。
酢味噌和えや天ぷら、吸い物で食べるとおいしい。
雪が解けると、ぐんぐん葉を伸ばす。早春に食べられる貴重な食材。
主な栽培地 | 金山町 |
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収穫時期 | 8月中旬 |
昭和14年に村山地方から来た炭の検査官が種を荒木家に寄贈して以来、荒木家で代々栽培されてきた。
つるなしのいんげんで、乾燥させたさやごと水でもどして食べることができる。
煮るとさやが透き通り、中の豆がうっすら見えて美しい。
若実を食べても柔らかくておいしい。
主な栽培地 | 鮭川村庭月 |
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収穫時期 | 9月下旬~10月下旬 |
鮭川村曲川楢山で栽培されていた「アオバコ豆」から選抜したもの。
もともとは苗代に植えていたので、「なっしょ豆」と呼んでいた。
大粒で色鮮やか、独特の豊潤な香りがあり、甘みが強い。
8月頃、可憐な花をつける。
神代豆の餡がたっぷり入った「神代豆まんじゅう」は、鮭川村でしか買えない、ここだけの味。
主な栽培地 | 真室川町 |
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収穫時期 | 7月~10月上旬 |
川舟沢地区の佐藤家で代々受け継がれてきた。
完熟した種が茶色なことから、「茶ささぎ」とも呼ばれる。
つる有りの種で、莢は長い。
若実は柔らかで味がよく、おひたしや味噌汁の具として食べるとおいしい。
完熟した種実も煮豆などで食べられる。
伸びた蔓をからませるため、手柴を立てる。
この方法は、支柱や誘引ネット等の農業資材がなかった時代から引きつがれる伝統的な手法。
完熟した豆。煮豆にしてもおいしい。
主な栽培地 | 大蔵村滝ノ沢 |
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収穫時期 | 11月上旬 |
以前は最上地域全域で栽培されていたが、現在は滝ノ沢周辺でのみ栽培している。
肘折温泉の客が「肘折の大根」と呼んだことから名前がついた。上部が赤紫色になる。
生では硬くて辛いが、漬物にするとパリパリとした食感がよい。
大根おろしにして食べてもおいしい。
初夏、肘折大根の種ができてくる。
辛味が効いた肘折大根はおろしにしてもおいしい。